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死神王と死神
Interlude - 王妃の歌
私はあなたを見ていたのです。
そうです。かたときでさえ、わずかでさえ、この目も、この心も、決してあなたから離れることはなかった。
ただそれだけだったのです。
でもある時──
私は知ってしまった。あなたの目に映る私が、かつての私であることを。
そしてあなたが、目の前にいる私を見ようとしないことを。
私は、どうしていいのかわからなかった。
失ったものを、もとあったとおりに取り戻すことは出来ないのだから。
彼女たちは私に言った。目もくらむような金細工や、虹の色をした石を身に付けたなら、彼の愛が取り戻せるかもしれないと。私はその言葉にすがりついたのです。
だけど──
あなたの心は遠ざかるばかり。虚しさに張り裂けそうな胸を取り繕うように、私は金細工や石を掻き集めた。両手に余るほど──いいえ、この身が埋もれてもまだ足りないほどに。あなたが、いつか、私をもう一度見てくれる日を夢に見て──。
そうして、長い長い年月が経ってしまった。
たとえそれが永遠に続く闇であろうとも、春を忘れた冬であろうとも、光が戻ってくるのを震えて待つ蕾のように、ただあなたを待つ日々だった。
私はもう、自分がいったい誰なのかさえ、覚えていない。
ただ、こうして、あなたが私のもとへ帰ってきてくれることを、信じて待っていたのです。
たとえそれが、死を間近に待つわずかの間であったとしても。
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