「混色」が最も多く使われるのは、植物の「緑」を描く時ではないでしょうか。
「緑」は、「黄」と「青」を混ぜてできる二次色です。 混色の割合によっても結果が違ってきますが、さらに 材料となる二つの色の種類を変えることを加味すれば、 この二次色のバリエーションが無限にあることが想像できることでしょう。 淡い色や暗い色、そのほかに濁る色や粒状化する色など、 色ごとに異なる特性を活用して、様々な新しい色を作ることができるのです。
混色において「緑」がことさら重要視されるのは、 実際に木々の葉の色を見ればわかるとおり、 種類ごと、季節ごとにじつに多彩な「緑」が存在するからです。 自然界には単調な緑は存在しません。
というわけで、いろいろなグリーンを作ってみましょう。
ウィンザーイエロー X セルリアンブルー
明るい色どうしの組み合わせ。セルリアンブルーが粒状化して、完全には混じりあいません。
ニューガンボージ X ウィンザーブルー
中庸な色どうしの組み合わせによる標準的なグリーンです。
ここで混色の好例としてグリーンの例をあげたのは、最初に書いたように、 この色の使用頻度がほかの色と比べて多いと思われるからですが、 逆にいいますと、ことさらに混色を多用することには疑問があります。 といいますのも、混色は、絵の具そのものの純度(彩度)を落とすというマイナス面ももっているからです。
マイナスといってもまったく不要な要素というわけではありません。 ひとつの画面の中に、彩度の高い部分(冴えた色)や低い部分(鈍い色)、あるいは 色の淡い部分や濃い部分が共存して、それで絵としての調和が生まれるわけで、 その調和を生み出すためには、冴えた色も鈍い色も両方必要なわけです。
(とくに冴えない地味な)混色が画面の中で演じるのは多くの場合脇役です。花を引きたてる葉っぱのようなものです。 葉っぱや木々でのグリーンの混色には制約がないといっていいでしょう。ですから、混色の感覚をつかむには、 グリーンを通していろいろ試していくのがよいと思うのです。
ネイプルスイエロー X プルシャンブルー
クリーム色に近いネイプルスイエローは主張のないイエローですので、割合にもよりますが、ブルーと混ぜるとほとんど痕跡がなくなります。
カドミウムイエロー X ペインズグレー
濁る特性のあるカドミウムイエローと、青黒のペインズグレーの組み合わせ。ほとんど黒に近い、深い緑です。
混色
複数の色を混ぜて新しい色を作ることが「混色」です。これは、水溶性の画材の大きな特性のひとつでもあります。