補足
Grid and Vidar
本編は、北欧神話をもとに、多少の脚色をくわえて構成したものです。 ここでは補足として、登場人物の概要およびその解釈、 分析、妄想?をあげておきたいと思います。
ヴィーザルとも。森の神、沈黙の神。神々の父オーディンと、霜の女巨人グリードとの息子。
スルトの炎に遭っても死ぬことがない。それは彼が森の神だからだという。ラグナロクでは、彼の住む森を囲むヴィーグリーズ(あるいはヴィガルド?)という広野が最後の決戦の場となった。
沈黙の神の名の通り、神話物語の中で言葉を発する場面はない。神々の宴の最中に、ロキが罵詈雑言を吐いて大暴れしているとき、オーディンが「お前はヴィーダルの隣りに座っていろ」と命令する場面があるが、これはオーディンが、ヴィーダルの沈黙の力を借りようとしたのかもしれない。けれども絵柄的には、これから起こる出来事の暗示とも想像できる。オーディンはロキの子供であるフェンリルによって殺され、そのフェンリルを討ち取るのがヴィーダルなのだ。彼はそもそもが、父の復讐を遂げるために生まれてきている。
力は強く、これは母譲りのものらしく、太刀打ちできるのはトールだけだという。父の仇フェンリルと戦ったときの武器については、「余り革で作った靴」以外に目だったものがなく、とどめは心臓へのひと突きとされてるものの、得物は槍であったり剣であったりしていて、ミョルニルを引き継いだトールの息子とは少しそのへんの扱いが違うようである。
オーディンの後継者として最有力の神ともいわれるが、はっきりしない。ただ、彼と同じように、物語の中へほとんど登場せず、オーディンの死後にわかに高い地位を得ることになるのが、ヘーニルである(彼はむしろ不評を買っていたほうだ)。このような急展開は、世界の転換、パラダイムシフトの規模の大きさを説明するひとつの手立てであると考えることもできる。ヴィーダルは不評こそ買ってはいないけれども、旧世界に存分に適応していたとは言えない(トールのように華々しく活躍したのなら話は別だが)し、その説明の一助になりうるのではと思う。
ヴィーダル Vidar
ウォーデン、ヴォータンとも。最高神。神々の父、戦士たちの父。
8本脚の灰色の馬スレイプニルに乗り、鷲の形をした兜と金の鎧を身につけ、手には必中の槍グングニルを持って戦場へ赴く。長い髭と隻眼。失った右の目は、知恵の蜜酒と引き換えにえぐり取って、知恵の巨人ミーミルの井戸(あるいは泉)の中へ投げ込んでしまった。
蛮勇をもって美徳とするような世界の主役でありながら、彼自身は知恵者であり、策謀に長け、変身術まで使う魔術師である。貪欲で狡猾。目的のためなら手段を選ばない。
破壊神の一面を持ち、生涯を通じて、ラグナロク(神々の黄昏)という最終到達点に思いを馳せているように見える。彼はヴァルハラという場所に戦死した人間の英雄を集め、来たるべき日に備えているが、そのさい英雄側の意向には一切配慮を払わない。けれども、狂おしいほどの戦いへの欲情を望む戦士たちは、それをもたらす唯一の存在であるこの「戦士たちの父」を慕ってやまない。このような性格は、この神を特に愛したヴァイキングによって培われていったと考えられている。
神話の物語は彼の死とともに終わっているので、その後だれが彼の後継者となったかなどについてはほとんどわからない。それが最高神へのある種の配慮でもあるのだろうが、『ヴァフスルーズニルの言葉』という文献には、次のような記述がある。「スルトの炎が消えるとき、ヴィーダルとヴァーリが神々の家に住むだろう」。
オーディン Odin, Woden, Wodan
ロフトとも。巨人族の両親から生まれたが、器量のよさを買われてアース神族として暮らすことに。火の神とも。
最後の3体の怪物、大狼フェンリル、大蛇ヨルムンガンド、冥府の女王ヘルの父となる。こうして最後はすっかり悪の総大将になる彼も、アース神族に迎えられた当初は、だれもが好感を持つ善い巨人だったという。
主役格のオーディンやトールと行動を共にすることが多く、しかも彼のやらかすことは物語の原動力となりうる重要なものが多いので、彼なしには話が進まない印象さえある。トールの妻の髪を無断で切ってしまったり、かわうそを殺したり、ホズを使ってバルドゥルを殺したり、彼は気の向くまま悪事に手を染めていくように見えるが、それらはどれも重要な原因であり、世界を変えるような甚大な結果をやがて連れて来る。
行動力、ずる賢さ、変身が得意なところなど、かれはオーディンに似た特質を備えてもいる。ロキというキャラクターじたいは後付けの部類らしいので、もしかするとこの悪神は、オーディンのダーティな部分を被ってくれているのかもしれない。
ロキ Loki, Lopt
欠点がないところが欠点というくらい、よくできた神様。容姿は美しく、知恵があり、いつも優しく朗らかで、間違った判断をせず、怪我や病気まで治してしまう。
キリストの移植といわれる神様で、一度死ぬが復活する。
そのころ盲目であった(←いったいどうしてそうなったのかはわからない)弟のホズは、ロキから渡されたヤドリギの枝を、まさかそこに兄がいて、しかもそのヤドリギの枝だけが兄を殺すことができるとはつゆ知らず、ロキに促されるまま投げつけてしまう。それでバルドゥルは冥府へ赴くが、女王ヘルの権限は絶対であり、しかもまたしてもロキが策謀を巡らして徹底的に邪魔をしたので、ついに神々の黄昏が終わるまで、彼は戻ってこられなかった。
バルドゥル Barder
ホーニルとも。最初の英雄ブーリの息子ボルと、女巨人ベストラとのあいだに生まれた三人の兄弟のうちの一人で、この中にオーディンも含まれる。
もうひとつの神族であるヴァン神族とアース神族が停戦後、平和協定の条件として、お互いに人質を出しあった。アース神族から送られたのがヘーニルとミーミルであり、とくにヘーニルは支配者として期待されたが、ほとんど役に立つことがなかったので、ヴァン神族の憤慨を買った。どうやらオーディンのような支配者の資質は彼には無かったらしい。
けれども神々の黄昏が終わったあと、かれはヴィーダル、トールの息子たち、バルドゥルといった面々とともに戻ってきて、指導者の立場に立つ。そこでの彼は、もはや役立たずではなかった。
ヘーニル Hœnir
ヴァン神族の国ヴァナヘイムからアースガルドへやってきた美貌の女神。父は海神ニヨルズ、双子の兄にフレイ。
優れた魔法使いで、鷹の羽衣を着ると自由に空を飛ぶことができた。オーディンの魔術も彼女によってもたらされたという説がある。
オーズ(Odur、もしくはOd)という夫がいたが、失踪してしまった。この人物はオーディンであろうといわれている。
ブリーシング(ブリーシンガメン)という首飾りを手に入れるため、これを作ったこびとたちに体を許すなど、装飾品、金銀財宝へのあくなき執念をみせる。別名「メングロズ(首飾りを喜ぶもの)」。
フレイヤ Freyja
優れた武器や道具を神族のために作ってくれる種族。ロキは、イーヴァルディとシンドリを仲たがいさせ、互いに競わせて、グングニル、ミョルニル、勝利の剣などを作らせた。
ドヴェルグ(こびと族)
・北欧のロマン・ゲルマン神話/D.A.マッケンジー(大修館・1997)
・北欧神話の世界~神々の死と復活/A.オルリック(青土社・2003)
・ヴィジュアル版世界の神話百科~ギリシア・ローマ・ケルト・北欧/A.コットレル(原書房・1999)
・北欧神話/P.コラム(岩波少年文庫・1955)
・生と死の北欧神話/水野知昭(松柏社・2002)
・オージンのいる風景/H.パウルソン(東海大学出版・1995)ほか
参考書籍
最終更新日 2011/09/23
@死神王と死神
@死神王と死神・終わりの物語
王が「絶望の森」で出会う死の使者。中性的な子供の姿をしており、言葉も話さなければ感情も見せない。王が彼についていくのを拒んだときも決して引き止めなかったが、その姿は観察者の投影であり、本来の彼は形すら持っておらず、知覚の概念を越えた場所に存在している。彼の意味とその力を理解していた王は、彼を「本物の死神」と呼び、彼を自分の世界に実在として引き入れるため、森の淑女を彼の母親に選ぶ。彼女の息子として生まれた彼(具象)は、子供の姿から大人の男に成長する。
光の子・抽象
光の子・具象
死神王と森の淑女の間に生まれた男児。ほんらい抽象である彼は人の知覚に触れず、その枠の外から働きかけるのだが、具象である男児は、知覚の枠内に出現した仮の姿であり、しかしそこで働きかけることは一切しない。彼が語るのは真実だけであり、それは知覚の外にしかないので、この枠の中での彼は沈黙を守るほかにないからだ。死神王の子として肉体を得た目的はただひとつ、戦乱と謀略の果てに死ぬことを望んだ父のために、彼を戦場のただ中へ迎えに行くこと。
@ゲーム
欠片
サキー
主人公をサポートする謎のチートキャラ。無属性の槍使い。
沈黙神の細分化された分身であり、隠者の保護下にある謎の子供たち。神出鬼没。
沈黙神として隠しボスで登場。もちろん鬼強。勝てないけど、大して重要なボスでもありません^^
タロットカード
対応するカードは「審判」。
隠しボス
@死神王と死神・終わりの物語
両目のオーディンに対応するキャラ。
島の小国の若い王。戦にかけては天才的で、みずから剣を取っても、また戦略を立てさせても誰にも引けを取らなかった。下男の謀略で国が侵略者の手に落ちようとした時、首謀者の手先となった父と母を殺害することで危機を脱したが、その罪悪感のあまり「絶望の森」へ姿を消す。自己崩壊という死の直前、父母殺しの罪悪感に引き戻されて自我を取り戻し、彼を迎えに来た死の使者である「光の子」と再会の約束をかわしたあと、もとの世界に戻ってくる。
光り輝く若い王
@ゲーム
オレアル
「試練の孤島」主人公。クールで感情を押し殺したような印象を与える大人びた少年だが、冒険への情熱は人一倍。ちなみに登場時は名前がなかった。
そこで妻と出会うが、彼女の豹変に遭って再び絶望させられた彼は、今度は邪悪な偽の死神から、みずからの犠牲と引き換えに、世界の破滅を引き寄せる力を授かる。そのときから彼は「死神王」という別人に生まれ変わった。
死神王
片目のオーディンに対応。
偽の死神に、若さと右目と罪悪感を売り払ったあとの光り輝く若い王。呪術を操り、未来と世界を見通し、不食にして不死の肉体を持つ。死者を前にして、祝福を送るかのように微笑むことから「死神」と呼ばれるが、秘密を明かしているのは剣士と衛兵の二人だけ。世界の破滅という悲願のために、残された人生のすべてを費やす。
タロットカード
皇帝
吊るされた男
隠者
対応するカードは3枚あります。彼の人生の変遷を表しています。
"Grid and Vidar"に関する記事
"死神王"およびゲームなど
に関わる記事
@死神王と死神・終わりの物語
死神王の片腕。剣士や衛兵と違うところは、主人の本当の目的を知った上で共感していること。出自不明、天涯孤独な身の上で、自分を初めて必要としてくれた人物である死神王を父親のように慕う。その死神王を心ならずも殺した彼の前に光の子が現われたとき、その手を取るほかに何もできないほど彼は絶望していた。それはかつての死神王、光り輝く若い王が絶望の森で置かれた状況とまったく同じで、そのとき王を世界に引き戻した「父母殺し」の罪が贖罪された瞬間であり、王は少年とともにそこから救い出されたのである。
黒髪の少年
@ゲーム
???
「TAROT★ISLAND」主人公。「試練の孤島」にもこっそり出ていたキャラで、ボスの一人・火精とも繋がりがある。
タロットカード
対応するカードは「愚者」。ほかに「恋人」「運命の輪」「悪魔」「太陽」といったカードにも登場する。
@ゲーム
エニー
古代魔術の使い手。異世界からやってきたらしい。
タロットカード
対応するカードは「運命の輪」。彼によればこの図柄は、世界の成り立ちを説明しているという。
@死神王と死神・終わりの物語
南の豊かな王国から輿入れしてきた美貌の花嫁。王が北の大陸の女たちと取引を始めたとき、彼女らがもたらす装飾品にすっかり魅せられたことで、それまでの無垢さや夫への純愛を失ってしまう。その後北の人々とのあいだに戦争が起き、女が貞淑を忘れ、男が略奪に明け暮れ、国と人心が荒廃したとき、すべての元凶は彼女にあると非難される。そして王は、本来の彼女を喪失した絶望のために死神王に成り下がった。
王妃
@ゲーム
レイラ
生粋のヒーラー。そのわりに性格は結構きつい。
タロットカード
対応するカードは「女教皇」。
それでも彼女を愛していた王は、彼女を焼き殺したといって国民を騙し、秘密を知った彼女の父に策略を仕掛けて一味に引き入れてしまう。その策略のために一度城を陥落させ、北の大陸の兵士たちを扇動して戦争を仕掛けるまでしてのけた。その後彼女は、死神王に呪術をかけられて我を失い、彼の監視下に死ぬまで置かれることになる。
かつて覇権を争った2つの神族のうち、より古い起源をもつ神族「ヴァン」の長。ヘーニルとの人質交換でアースに遣わされ、巨人族の妻をめとって暮らした。
ニヨルズ Njord
@死神王と死神・終わりの物語
豊かで温暖な南の国の首領。島の王による娘の掠奪事件を穏便に収めるため、人員交換という剣士の案に乗って、娘と一緒に島へやってきた。知恵と洞察力に優れ、運命を見通す眼力がある。南の人々は、戦争に明け暮れる島の男たちと違って戦略・謀略に疎い平和主義者であり、権力者の支配体制も厳格でなく、彼の権限は島の王のそれに比べると緩やかで小さい。心優しく平和な人々は、北の大陸の人々を未開の野蛮人と信じており、地理的にも能力的にも、島の勇猛な戦士たちの存在をこの脅威からの防御壁と認識している。
王妃の父
@ゲーム
ノール
しぶしぶ修行に出た先でオレアルと出会う生真面目な魔術師。
タロットカード
対応するカードは「魔術師」。
この点で彼らは王の父と似通っており、これに対して向こう見ずで好奇心の強い王は、父や彼らのようにただ恐れて距離を置くことはせず、みずから働きかけて関係を持ちかけにいった。
オーディンとフリッグの息子で、戦の神。一説に巨人ヒュミルの息子とも。剣の達人として知られ、その愛剣にはルーン文字が刻まれている。
チュール Tyr, Tir, Thwaz
@死神王と死神・終わりの物語
王のもっとも信頼する腹心。剣の腕は主人をしのぐ。幼いころから王の傍に仕え、王の命令には絶対に逆らわないが、正直に批判をし、適切な忠告や知恵を与えるブレーンでもある。王が王になった後も、衛兵と彼の二人は忠誠を覆さなかった。
剣士
@ゲーム
ティル
隔絶された孤島の神官一族に生まれたが、胸の内では冒険心が燃え盛っている。
タロットカード
対応するカードは「戦車」。
知恵の巨人。人質交換でアースからヴァンに送られたうちの一人。ヘーニルの失態がもとで断首の憂き目にあうが、オーディンの魔術により生きながらえる。右目と引き換えに、未来予知の力をオーディンに授けた。
ミーミル Mimir
@死神王と死神・終わりの物語
偽者の死神。王が2度目に絶望したとき、彼は妻への未練から、本物の死神である光の子のもとへ向かうかわりに、破滅の呪術を使う彼を呼び出した。死が恐れるべきものという人の無知が生み出した恐怖の存在であり、その力で魂を捉えて再び幻の世界へ放り込む。これに対して光の子は真実をもたらすので、魂を輪廻から救いだす力を持つ。
死神
@ゲーム
タロットカード
対応するカードは「死」。絵柄は恐ろしげだが、暗くくたびれた世界が終わり、明るく整った新世界の到来を告げる意味もある。
世界樹イグドラシルの根元にある井戸(あるいは泉)に住む3人の女神。過去をすべて知るウルド、現在を知るヴェルザンディ、未来を知るスクルド。
ウルズの女神
@死神王と死神・終わりの物語
あらゆる過去を物語する長姉、隠された真実を知っている次姉、そして未来を語る、のちの森の淑女である末妹。
三姉妹の巫女
@ゲーム
林檎の樹の女神
夢でオレアルを導く謎の存在。変身術にも長けている。
タロットカード
対応するカードは「世界」。
これらの人格は、最初の息子が黒髪の少年に語る「白鳥に化けた最初の女神」に集約される。